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1粒5グラムの四角い塊を口にふくむと、甘みとともに酒粕(さけかす)の香りが広がり、淡雪のようにとけていく。生キャラメル「キャラメリッチ」は、ツンとした妙高山(2454メートル)の姿が美しい、上越市板倉区田屋の造り酒屋「泉流酒造塾」で生まれた。 日本酒は「淡麗辛口」が主流という。だが7年前、弥彦村から板倉区の旧酒蔵に移ってきたこの造り酒屋は、スイーツの日本酒をめざし、昨年、甘口の純米酒「泉流越の山」と「桃姫」を造り出した。 中でも「桃姫」は、赤色酵母を使った、珍しいピンク色の日本酒で、搾った後に同色の酒粕が残る。「この酒粕を何かに生かせないか」と考え続け、「これなら」とひらめいたのが、ピンクの酒粕入り生キャラメルだった。「北海道の花畑牧場の生キャラメルがヒントでした」と明かす。 弥彦村時代は、事務職だった。上越に来て、酒造りやスイーツ作りに取り組むことになろうとは、思いもしなかった。「軽い気持ちで始めちゃった」と言う生キャラメルの試作は、元々が酒を分析していた3畳の小部屋にエアコンや冷蔵庫を置いて始まった。生クリームと牛乳をかき混ぜて煮詰め、とろとろになったら酒粕を入れ、さらに練る。「一番おいしいと思える分量にたどりつくまで試作を重ねた」と振り返る。 この酒粕入りと、板倉区特産のイチジク、そしてチョコレートを練り込んだ3種類を開発。昨年10月、地元のコンビニや妙高市の「道の駅あらい」で売り出した。「リッチな気分でキャラメルを」と、若い女性従業員が命名した「キャラメリッチ」は、12月ごろから売れ始めた。 酒蔵の玄関脇に立つ、事務所を改装した「キャラメル部屋」は、12畳ほどの広さ。エアコンが利いた室内で、白衣姿の女性たちが生キャラメル作りに携わる。10人の従業員と、2人のパート従業員はいずれも女性で、ほとんどが20代だ。生キャラメル部門は本間さん、酒造りは塾長の多賀友夫さん(92)と副塾長で多賀さんの長男豊さん(59)が指導に当たる。 経営者の豊さんは、経理や対外交渉など何役もこなす本間さんを「何事もあきらめずに努力する人」と高く評価する。その本間さんは、キャラメル風味のせんべいや桃姫のゼリーなど、新たな商品開発に取り組むなど、目が回るほどの忙しさだ。時には「なんで始めちゃったのかと思う。ボーッと何もしない時間がほしい」と苦笑する。 酒蔵を開放した「酒蔵カフェ」も近く開く。日本庭園が見渡せる部屋にはグランドピアノも置いてある。「時間を忘れて、のんびりしていただければ」。本人が一番欲しいそんなひとときを提供する。(河畑達雄) ◇ ほんま・かづこ新潟市生まれ。地元の高校を卒業後、東京都内の電器店に勤務。退職して豪州へ。日本食レストランで働きながら、1年間滞在した。帰国後、弥彦村の酒造会社に事務職として採用された。02年に現在地に移り、酒粕入りの生キャラメル「キャラメリッチ」(1箱840円)を考案、ヒット商品に。
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